最新情報は 最新トピックスのページへ
スピード矯正とは
- (注)”スピード矯正”という用語は、使う先生によって意味が少し異なったりします。次の5つぐらいの意味で使われています。
- α. コルチコトミーまたはピエゾシジョンを併用した矯正治療。下記のb, c。
- β. 外科的な術式を併用した矯正治療。下記の2。
- γ.矯正治療期間が短縮されるといわれている治療装置、治療器具、治療方法を用いた矯正治療。下記の1, 2, 4。
- δ. 矯正インプラント(スクリュー、TAD、下記のe)を使用した矯正治療をスピード矯正という先生もある。
- ε. 矯正装置を使用せずに歯を削ってクラウン(被せ物)などで治療する場合もスピード矯正という先生もある。
- * Accelerated orthodontics といえば、下記の2, 4でしょう。
- *理論の学問であれば用語の定義が重要ですが、医学は実践の学問ですから、治療効果の有無が重要であり、用語の使い方はあまり重要でないのかもしれません。このページの中でも厳密に言えば少し違うなという用語の使い方もしていますが、ご容赦ください。
“歯が速く移動する“ ≠ “治療期間が短い“
- “歯が速く移動する“と“治療期間が短い“は必ずしも同じ意味ではありません。“歯が速く移動するかどうか“は骨の代謝活性の高低ですから、臨床実験や動物実験で検証できます。一方、“治療期間が短縮されるかどうか“は統計によるしかないので、いまいち、あてにならない。どのようなサンプリングがなされたのかで、結果が異なってきます。治療期間を左右するのは、歯ならびの状態、治療方法、年齢、歯の動きやすさの個人差などです。これらを一定化または標準化して、さらにその母集団を大きくするのは非常に困難です。
方法
- 1. 力系
- a. low force, low friction: デーモンシステム(商品名)を使用すると治療期間が短縮されるという論文と差がないという論文がある。
- 2. 外科的
- b. Wilckodontics(Dr. Wilckoのサイトにリンク)、コルチコトミー: コルチコトミー(歯槽骨皮質骨切術)とは、歯肉を切開し剥離して骨を露出させ骨に切り込みを入れ骨組織の代謝を活性化させる術式で、歯周外科で用いる器具を使用する。歯の移動が速くなるという論文が多い。効果は大きいが、適応症が限られ、侵襲性が大きく、副作用が生じることもある。オステオトミー(歯槽骨切術)やヘミオステオトミーもある。
- c. Piezoincisions(ピエゾシジョン): ピエゾシジョンとは、歯肉を切開(剥離しない)して骨に切り込みを入れる術式で、ピエゾサージェリー(三次元超音波振動により骨切する器具)を使用する。コルティシジョンはピエゾシジョンと同じ術式でメスで骨に切り込みを入れる。
- d. Propel(製造販売会社にリンク)(プロペル、商品名): プロペルMOPs (Micro-Osteoperforations:微小骨穿孔)。プロペルは、歯肉の切開と剥離をしないで歯肉と骨に小さな穴を開けるための器具。プロペルは、コルチコトミーほど効果は大きくないが、適応となる症例は多く、侵襲性があまりなく、副作用が生じにくい。プロペルに関する論文の数は少ない。
- プロペルの使用方法(by Mani Alikhani in AAO, 2015):
@各治療段階において動かしたい歯(単数または複数)を決める。
A歯を動かしたい時期にプロペルを使用する。
Bたくさんの量を動かしたいときには、少なくとも数ヶ月ごとにプロペルを使用する。
C動かしたい時期に動かしたい歯の近くにプロペルを使用する。
Dアンカレッジとなる歯の近くにプロペルを使用していけない。 - e. TAD、矯正インプラント、スクリュー: 歯の牽引方向を変えられるのであって、歯の移動速度とは関係ない。意図する方向に矯正力を加えることができるので、その結果として治療期間が短縮されることもあるでしょう。
- * 以上のb, c, d の作用機序はほぼ同じでしょう。一般的な話ですが、
・効果は、コルチコトミーが大きい(2-4倍のスピード?)、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが小さい。
・適応症は、コルチコトミーが少ない、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが多い。(適応症というよりも矯正医が使いやすい、患者さまが受け入れやすいと言う意味で)
・侵襲性は、コルチコトミーが大きい、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが小さい。(体を傷つける度合い。たとえば、顔が腫れることがあるとか)
・副作用は、コルチコトミーが多い、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが少ない。
・費用は、コルチコトミーが高い、ピエゾシジョンが中くらい、プロペルが低い(?)。
以上は個人差が大きいです。- ・歴史的には、オステオトミー → コルティコトミー(1991年) → コルティシジョン(2009年) → ピエゾシジョン → プロペルMOP(2013年)の順で考え出されてきた。オスエオトミーのころは骨を切断分割して骨と歯を一つのかたまりとして移動するので歯が速く動くと考えられていたが、そうではなくてRAP (
Regional Accelelrated Phenomenon)によって骨代謝活性が高くなることによって歯が速く動くという考えが出てきたことによって新しい術式が考え出されてきた。
・RAP ( Regional Accelelrated Phenomenon)- ・局所に加えた外科的な刺激が骨吸収と骨新生を促進する現象(Frost)
・骨損傷後の97%に生じる(Shih, Norrdin)
・外科処置後の2, 3日以内に始まり、通常1-2ヵ月でピークを迎え、6ヶ月ほど続く(Akano)
・文献考察よりRAP現象は4ヶ月継続する(Mathew, Kokich) - 3. 薬物的
- f. 研究段階であり、製品として発売されていない(たぶん?)。
- 4. 理学的(1.3-2倍のスピード?)
- g. AcceleDent(製造販売会社にリンク)(アクセルデント、商品名): アクセルデントは、歯に振動を与え歯を速く移動させる器具。アクセルデントに関する論文の数は少ない。
- h. OrthoPulse(製造販売会社にリンク)(オルソパルス、商品名): オルソパルスは、LED の光を歯肉に照射し歯を早く移動させる器具。 オルソパルスに関する論文の数は少ない。
- i. Low level laser: 970 nmぐらいの diode laserを歯肉に照射する。たとえば、 K-LASER(製造会社にリンク)
- j. 超音波骨折治療器: 動物実験で歯が速く動いたとH大学歯学部の先生が学会発表していた。整形外科では保険適用? ベッカムも足を怪我したときに使用したらしい。日本製ならオステトロン超音波骨折治療器(製造販売会社にリンク)?
"Love 'em or hate 'em"
"hare and tortoise"
新技術が普及する条件(Dr. John Pobanz)
- 1. 低コスト
- 2. 侵襲性が小さい
- 3. 矯正医が施術できる
- 4. 特別な医療機器が必要でない
- 5. 患者さまの協力が必要でない
- 6. 適用範囲が広い
- 7. 有効性がある
- *Dr. John Pobanzはプロペルを使用?
Acceleration: The LEVEL of Information?
- Procedures
- Invasive
- Distraction
Corticotomy
Intra Septal
Surgery
- Piezzocision
Corticision
- Devices
- Lasers
MOP
Vibration
Electrical Stimuli
Brackets
Appliance Systems
- PGs
PGs + Ca
Interleukins
OPGs
RANK/RANKL
Vit D
PTH
Relaxin
PRPs
by Nikjilesh R Vaid, in the AAO, 2015
Several Bioactive Agents Modulate Rates of Tooth Movement
-
Increase Tooth Movement Rate
-
・Osteoclacin (Hashimoto et at., 2001)
・Nitric Oxide (Shirai et al., 2002)
・Misoprostol (Shekvat et al., 2002)
・Postaglandin E2 (Seifi et al., 2003)
・RANKL gene (Kanazaki et al., 2006; Iglesias et al., 2006)
・Human growth hormone (Varble et al,m 2009)
・RANKL protein (Smith, 2012)
-
・Bisphosphonates (Igarashi et al., 1994)
・Nitric Oxide Synthase Inhibitor (L-NAME) (Hayashi et al., 2002)
・Estradiol (Haruyama et al., 2002)
・Eschistatin (Dolce et al., 2003)
・MMP Inhibitor (Holliday et al., 2004)
・OPG gene (Kanazaki et al., 2004)
・OPG protein (Dunn et al., 2007; Hudson et al., 2012; Schneider, 2012)