“部分矯正”は、“少数の前歯だけに矯正装置を接着して、短期間&低料金でできる前歯だけの矯正”という意味で使われているようです。“短期間&低料金”が強調されすぎている。 → 用語の正確な定義は教科書を参照してください。
“部分矯正”という用語は歯科矯正学の教科書には出てこないでしょう。似たような用語は、“minor tooth movement (MTM) ”ですが、MTMというのは少数歯を動かす矯正治療で、前歯に限定されません。もちろん、少数の前歯だけに矯正装置を接着して前歯だけを矯正することはありますが、それは“少数の前歯だけに矯正装置を接着して前歯だけを矯正する”のが適切であると診断されたからであり、“短期間&低料金”のためではありません。 → 用語の正確な定義は教科書を参照してください。
部分矯正では無理で全体矯正が必要な症例もあります。たとえば、下の前歯がジャマになって上の前歯をそろえられない症例とか、奥歯を後退させないと前歯を後退できない症例では、全体矯正が必要となる。
部分矯正が適用される軽度の不正咬合は、“部分矯正”、“クラウン(歯の全体を削って歯に被せ物)”、“ラミネート・ベニア(歯の前面を少し削って、オシャレ用の付け爪のような薄い人工歯を歯の表面に接着)”の選択になることが多い。セラミックを使ったクラウンやラミネート・ベニアを“セラミック矯正”と言っている先生もいます。
部分矯正 | クラウン(被せ物) | ラミネート・ベニア(貼り物) | |
審美性(歯の形態) | 矯正治療後にクラウンorベニア? | 選べる | 選べる |
審美性(歯の色) | 矯正治療後にクラウンorベニア? | 選べる | 選べる |
審美性(歯頚部の位置) | 歯根は動かすので調整できる | 歯根は動かさないので調整できない | 歯根は動かさないので調整できない |
予後の安定性(歯根の位置) | 安定しないこともあるので歯の裏側に細いワイヤーを半永久的に接着しておく | 歯根は動かさないので安定している | 歯根は動かさないので安定している |
予後の安定性(脱離脱落) | 歯の裏側のワイヤーの接着剤が脱離することもある | クラウンが脱落することもある | ベニアが脱落することもある |
虫歯になりやすさ | |||
歯の長持ち | 歯を削らないので長持ちする | 歯を大きく削るので長持ちしない(相対的な話) | 歯を少し削るのでクラウンよりも長持ちする |
治療費(1本の歯) | 歯の本数は関係ない? | 1本の歯の治療費 | 1本の歯の治療費 |
治療費(6本の歯) | 歯の本数は関係ない? | 6本の歯の治療費 | 6本の歯の治療費 |
治療期間 | 約半年? | 歯冠形成印象と合着の2回の通院、10日? | 歯冠形成印象と接着の2回の通院、10日? |
結論:
・歯を削りたくない人は、部分矯正?
・歯を削ってもいい人は、クラウン or ラミネート・ベニア?
最強の方法は、外科矯正 (入院手術、保険?)で顎骨の形態を修正し、歯列矯正で歯根の位置を修正し、クラウン/ラミネート・ベニアで歯冠の形態や色を修正し、美容外科(自費?)で口唇の形態を修正する。